
新しく結成したゲームマスター(以下、GM)の集結する館へ、差出人が記載されていない一通の紅色の手紙が届けられた。手紙を見つけた百歩威は、手紙の美しい色に見とれながら、連絡を取り仕切っている華鏡の元へ足を運ぶ。手紙を受け取った華鏡は、厳重に封をされた手紙から何か尋常ではないものを感じ、封を開けることなく、手紙を持って風詠の執務室へと赴いた。執務室で執務をこなしていた風詠は、華鏡の様子に執務の手を休めて手紙を受け取る。慎重に封を切り、目を通した。
風詠「華鏡さん。全てのGMに、ただちに会議室に集まるように伝えてください」
突然の召集に、一様に怪訝な表情で会議室に集まってきたGMたちだったが、席について待つ風詠の表情を目にすると、表情を改めて腰を落ち着けた。全てのメンバーがそろうと、風詠が口火を切った。
風詠「GMの座を辞した【GM】Joeのことは、皆知っていますね?」
SBO「あの伝説的なGMだな。拙者が入手した情報によると、何処かの地で、平穏な余生を過ごしているとか」
明太「Joeって誰っスか?」
煉焔「えぇ・・と確か伝説的?なGMらしい。数々の難題を作り上げ、皆に挑戦状を叩きつけることが趣味だったとか・・・うーんと・・」
華鏡「ちょっと!煉焔!そんなことも知らないのか?!カノン魔法学校行ってたってのやっぱりデマだろう?」
百歩威「え?やっぱり嘘だったんだ!そうだと思ってたんだよねぇ」
氷凍「そこ、静粛に。話はまだ終わってないんだ。煉焔が学校に行ってないことなんて、とっくに解っていること。いまさら騒ぐことでもないだろうに・・・」
兼定「で、一体その手紙には何が書かれていたのですか?」
普段であれば、GMたちのにぎやかなやり取りをほほえましく見守るところであるが、風詠は、硬い表情で黙したまま全員を見回し場を静めると、よく通る声で手紙を読み上げはじめた。
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突然の手紙で失礼する。このたび、新たなるGMが就任したと風の噂で耳にした。柄にもなく君たちに祝いの言葉を述べたくなって、筆を走らせることにした。私の名前は「Joe」。この私を知らないような者はそこにはいないと思いたいが、もしいるのであれば、そこにいるであろう風詠に尋ねるとよいだろう。
さて、早速本題に入ろう。
新たなるGM諸君。君たちの就任祝い代わりに、「挑戦状」を送る。
雪に煙るオカサス地方の南西。険しい崖と、静寂に支配された密林の奥深くに、今は時の中に埋もれ、人々の記憶からも忘れ去られた「廃城」がある。そこに私は「7つの謎」を残してきた。わたしの残した全ての謎を見事解き明かせば、君たちの前に大いなる真実が姿を現すであろう。
【GM】の名を冠する君たちならば、このような謎など、容易く解き明かすことが出来るはずだ。自信のない者は、クロノス大陸の冒険者の皆様のお力を借るのも良いだろう。
そうだな、なぜ、【GM】の座を辞したはずの【GM】Joeが挑戦状を投げるのか。それも謎といえば謎だろうがね。
ふふ・・・全ての謎を解いてみてくれ。大いに期待しているよ。 |
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手紙を読み終えると、風詠はゆっくりと一同を見渡した。誰からも、「挑戦状」を受けて立つという強い決意の表情が読み取れる。
風詠「Joeが私たちにどんな真実を見せたがっているのか。なぜ、【GM】の座を辞したはずのJoeが挑戦状を送ってきたのか。早速、彼のプレゼントを受け取りに行きましょう」
GMたちは大きくうなずくと、彼の挑戦を受けるべく立ち上がったのだった。 |